Notes

個人開発者のための Supabase と Cloudflare

SupabaseCloudflare個人開発バックエンド

個人でサービスを作るとき、バックエンドに何を使うか。Supabase と Cloudflare が候補に挙がることが多いので、実際の数値で整理します。

この記事の数値は2026年8月時点の公式情報です。 この手の上限は頻繁に変わるので、実際に契約する前には必ず公式を確認してください。出典は最後にまとめています。

まず、この2つは同じ層の製品ではない

比較の前にここを押さえないと、話が噛み合いません。

Supabase は BaaS です。データベース、認証、ストレージ、リアルタイム通信が最初から1つにまとまっています。契約すればその日から全部使えます。

Cloudflare は部品の集合です。処理を動かす Workers、SQLのデータベース D1、キーバリューの KV、ファイル置き場の R2。必要なものを自分で選んで組み合わせます。

つまり「Supabase 対 Cloudflare」ではなく、「1つにまとまったもの」対「自分で組むもの」の比較になります。

やりたいこと Supabase Cloudflare
SQLのデータベース Postgres D1(SQLite)
簡単な保存 Postgres KV
ファイル・画像 Storage R2
処理を動かす Edge Functions Workers
ログイン Auth 該当なし
リアルタイム Realtime Durable Objects

最後の2行が、この記事の結論にほぼ直結します。

無料枠の実数

まず無料でどこまでやれるか。

Supabase Free Cloudflare Free
月額 $0 $0
データベース 500MB D1 合計5GB
ファイル 1GB R2 10GB
転送量(egress) 5GB/月 R2は無料
実行回数 Edge Functions 50万/月 Workers 10万/日
認証 月間5万ユーザー 該当なし
使わないと 1週間で一時停止 停止しない

有料に上げたときはこうなります。

Supabase Pro Cloudflare Workers Paid
月額 $25から $5から(最低課金額)
データベース 8GB込み、以降 $0.125/GB D1 5GB込み、以降 $0.75/GB
ファイル 100GB込み、以降 $0.0213/GB R2 $0.015/GB
転送量 250GB込み、以降 $0.09/GB 無料
認証 10万ユーザー込み 該当なし
一時停止 なし なし

決定的な差は3つ

数字を眺めるより、判断を変える差だけ拾った方が早いです。

1. 認証があるかないか

Supabase には認証が付いています。無料で月間5万ユーザーまで。

Googleログインもメール認証も、設定で入ります。さらに「本人のデータは本人だけが読める」というアクセス制御を、コードではなくデータベースの設定として書けます。

Cloudflare には、これに当たるものがありません。 認証系の製品(Access や Managed OAuth)はありますが、あれは社内アプリを守るためのゼロトラスト用途で、一般ユーザーがサインアップして使うアプリのための仕組みではありません。

つまり Cloudflare で会員制のアプリを作るなら、認証は自分で組むか、外部のサービスを足すことになります。 パスワードを安全に保管する仕組みを自作するのは、本来とても難しく、間違えると危険な領域です。

ここが最大の差だと思っています。

2. 無料プランが止まるかどうか

Supabase の無料プランは、1週間使わないとプロジェクトが一時停止します。

個人開発でこれは効きます。作って公開して、しばらく触らずにいると止まる。誰かが見に来たときに動いていない。趣味の延長で置いておきたいものには向きません。

Cloudflare の無料プランは止まりません。置いておけます。

3. 転送量(egress)が無料かどうか

R2 は転送量が無料です。 これは画像やファイルを配信するサービスでは決定的です。

Supabase の無料プランは月5GB。画像を扱うサイトだと、意外と早く到達します。有料プランでも250GBを超えれば $0.09/GB。

自社のECサイトを作り直したとき Cloudflare を選んだのは、まさにここでした。ECは画像が主役なので、転送量に課金されない構造が効きます。

アプリのバックエンドに使うなら

ログインがあって、ユーザーごとにデータを持つなら Supabase です。 迷う必要はないと思います。

理由は上の1つ目です。認証を自分で組まなくていい。しかも「本人のデータは本人だけ」を設定で書ける。この2つを Cloudflare で用意すると、作る量が一気に増えます。

無料の月間5万ユーザーは、個人開発の規模ならまず埋まりません。

注意点は1週間で止まることです。人に使わせるアプリなら、無料のままでは置けません。$25の Pro に上げるか、定期的に触るかのどちらかです。

Webサービスに使うなら

公開コンテンツが主役で、ログインが要らないなら Cloudflare です。

サイト、メディア、ブログ、商品を並べる店。この形だと Supabase の最大の強みである認証が効きません。逆に、転送量が無料で、止まらず、$5で広い範囲が使える Cloudflare の性質がそのまま利点になります。

いま読んでいるこのサイトも、記事の本文と画像を R2 に置いています。認証は使っていません。決済は Stripe に任せているので、ユーザー管理そのものが要らない構造です。

「ログインが必要か」を最初に決めると、選択はほぼ自動的に決まります。

両方使うという手もある

排他ではありません。認証とデータベースは Supabase、画像の配信は R2 という組み合わせは現実的です。

転送量の課金は画像で膨らむので、そこだけ R2 に逃がす。認証は自作しない。それぞれの得意な部分だけ借りる形です。

教科書で Supabase を勧めている理由

この教科書では、データと認証に Supabase を使うと書いています。この記事と矛盾しているように見えるかもしれないので、立場を書いておきます。

最初の1つを完成させるなら、部品が少ない方が完成する確率が高い。 これが理由です。認証もデータベースもストレージも1つにまとまっていれば、覚えることが減り、繋ぐ作業も減ります。0から1を目指す段階では、それがいちばん効きます。

この記事は、その先の話です。事業が回り始めて、転送量や固定費が気になり始めてから考えればいい。最初から最適化しようとして完成しないのが、いちばん損です。

選ぶときに気をつけたいこと

外部のサービスを組み込むときは、初期段階では逃げやすい形にしておくのを勧めます。

サービスに深く依存する書き方をすると、あとで移りたくなったときに動けません。データの出し入れを1箇所に集めておく、独自の機能に寄りかかりすぎない。それだけで、後から選び直せる余地が残ります。

収益が出てから、実際の使用量を見て固めていく。この順番が安全です。

出典

数値はすべて2026年8月時点の公式ページから引いています。